電源周波数磁界 (IEC 64000-4-8)

歴史的経緯

昔のブラウン管式テレビはブラウン管内部の電子線を磁界で制御していたために、外部磁界により映像が乱れるという現象があった。そのため、交流電源の影響で画面が乱れないかのチェックが必要で、この試験をする意味があった。しかしブラウン管テレビはもはやほぼ市場から消え、試験する意味がなくなった。

現在の状況

磁気によるコンパス等、非常に磁界に鋭敏に反応する装置でこの試験は不要。自己宣言書等により「磁界に敏感な部品は使っていない」と記載することで電源周波数磁界試験を省略することはできる。私の数十年に及ぶEMC経験でも一度もこの試験で引っかかったことはない。

日本の会社の保守的体質

試験不要といってもゼロリスクではないことは確かである。日本の、大手企業は失敗を極端に嫌うので大丈夫とわかっていても試験をすることが多い。試験サイトも試験毎に料金をいただくので試験不要でも要求があれば試験はする。何度か「この装置に電源周波数磁界の試験は不要ではないか?」と尋ねても不要にするという選択をするということは一回もなかった。

おまけ

ブラウン管式テレビだが、地磁気の影響で磁性がブラウン管に残って画像が乱れることがあった。初期は交流電源でコイルにより磁界を発生させ、テレビからゆっくり離れることで磁界を消去していた。そのうち、電源をオフするときに消磁回路が動作して自動的に磁界を消去するようになった。